電気自動車の開発・販売で自動車業界を牽引しているTeslaは彼らの自動車販売マーケティングで販売広告費を計上していません。そして車を販売するディーラーを次々と廃止しています。それにも関わらず、莫大な売上を稼いでいます。なぜ販売広告費や人件費を削ってもここまで多くの車を世へ送り出し、他社と一線を画すような経営手法で世界の自動車産業で次々と競合に打ち勝っているのでしょうか。今回はTeslaのマーケティング、売上推移、株価について様々な記事やデータをもとに書いていきたいと思います。
販売ディーラーの廃止
Teslaのイーロンマスクは2019年の2月に人通りの多い1部のショールームを残し、直営店舗の閉鎖に踏み切りました。予約販売のほとんどをオンライン上または、Teslaの工場、一部のショールームからのみにしました。これを可能にしたのはテスラの強固なブランド力によるものです。そしてTesla=イーロン・マスクという非常に大きく影響力のあるイメージがるので、Social Media(Facebook, Instagram, Twitter, and YouTube)上で広告費をかけなくても多くの人の関心が得られ、購買へと繋がっています。他社は、ポルシェが広告費のうちYouTubeに47%、14%をFacebookに費やしています。残念ながら幾らの金額のうちのパーセンテージかはわかりませんでしたが。Social Mediaにここまでの金額を投資しているのはかなりの本気度が伺えます。その他にもトヨタがFacebookへ62%費やすなど、かなりの広告費をSocial Mediaへ支出しています。ですがテスラは”0”です。さらにディーラーを廃止することで実際に販売する従業員を削ることで、車の価格を6%も下げることに成功しています。これはディーラーがなくても売れるテスラだからできることです。イーロンが自身のInstagramやTwitterで宣伝するだけで、売れます。そして多くのメディアも話題性のあるTeslaを頻繁にニュースで報道します。その結果、広告費を費やさなくても、車のことが多くの人が知ることができ、たくさんの予約が入ります。
BOSEとテスラの共通点
BOSEとは音響機器(イヤホンやスピーカーなど)を販売しているアメリカの企業です。BOSEも直接販売店舗をなくした企業の一つです。今年の1月に発表したのは今後北米、ヨーロッパ、オーストラリア、日本、で現在存在している店舗の閉店をして、オンライン販売へ移行するということです。なぜなら多くの人が実店舗ではなくオンラインからの購入というデータをもとにオンライン店舗への行こうという結果になりました。実店舗で一つ$300のスピーカーを売るのと、オンラインで同じ金額を売るのでは、確実にオンラインでの販売の方が利益率が高いです。なぜなら人件費が実店舗に比べ低いからです。もちろん、企業はオンラインも実店舗も含めた金額なので分ける事はできません。なので、実店舗で何十人と働かせ、同じ数や少し多い数を売るくらいなら、実店舗を無くし、オンラインで販売した方が遥かに売り上げが良くなります。もちろんこれができるのは十分にブランドが周知されており、見て選ぶという行為が必要のないブランド・業種によります。例えば、売り出したばかりのブランドで、様々な色があったり、実際に触れてみたりしないとわからない商品はこのやり方は向いていません。そのため、自社と商品の市場に対する分析が必須です。これはガイ・カワサキの本「徹底的に敵をへこます法」で語っていたことの一部でもあります。詳しくはそちらのブログをご覧ください。
テスラの売上推移
上記の表はMacrotrendsのサイトのテスラの年次売上推移データから、作った表ですが、2008年に$15million(15億円 *$1=100円)ほどだったのが10年で約1430倍になっています。そして2017年から2018年への上昇率も1.8倍にもなっています。なぜここまで売り上げをあげることができたかは、徹底的なブランド構築とそれに対する投資、社会のニーズがあったからではないでしょうか。1年間で約1.8倍にも売上をあげることは簡単ではありません。売上を上げる=生産台数を増やすということが必須です。特にテスラのように余剰に自動車の在庫を抱えていない企業にとっては生産量を急激に上げることはとても困難です。これを可能にしたのは、2017年にアメリカ・ネバダ州建設した大量のリチウムイオンバッテリーの生産を可能とするギガファクトリーです。そして車両本体の生産も同じ場所に集約することで、効率よく早く電気自動車の生産が可能になりました。これらが多数の顧客たちからの予約注文に答えるべく行われた生産設備を整える投資です。
テスラの株価
一時期テスラの株価が一株$400程度になったところで、空売り投資家たちが売り注文を入れたため、一気に株価は$200程度まで下落してしましました。ですが、イーロンはそんなことにも目もくれず、自社の株はアンダーバリューであり、今後もっと値上がりすると公言していました。実際2020年2月14日現在でテスラの株価は一株$804と異常なまでの値上がりを見せています。もちろん直近に決算があり、それと同時に予約台数の公開があり。予想より多くの予約注文があったのもあり、株価が跳ね上がったという報道もありました。ですが、TeslaのHPに行けばわかるのですが、予約だけであればお金を払わずともできるので、数字上よく見せることも可能です。そうだった場合は投資家たちに株価は上がりすぎと捉えられ、売りが多くなり、株価が大きく下落することも考えられます。ですが、Teslaがここまで株価を上げる要因となったのは、徹底的なまでのブランド意識と、環境に配慮した次世代の車というイメージを多くの人へ植え付けることに成功したからだと考えます。
最後に
今後のテスラ・モータースとイーロン・マスクの動向には注視しておく必要はありそうです。急激に高まる電気自動車の需要と自動車企業各社が既に市場を独占しつつあるテスラにどのような手で対抗するのかは非常に実物となっています。現在はトヨタが時価総額でこそ首位をひた走っていますが、売上の伸び率や企業の伸び率では圧倒的にテスラの方が上です。むしろトヨタが抜かれるのは時間の問題とさえみられています。アメリカの車は世界では売れないと言われていた時代から、まさかテスラのようなクリーンなイメージの自動車会社が現れ、10年ほどで世界を取れるかはみていて非常に面白いです。日本人としてはもっと日本車に頑張って欲しいところではありますが、今後世界の自動車業界がどう変容していくのかとても楽しみです。
Work Cited
https://forbesjapan.com/articles/detail/27050/1/1/1?s=ns https://www.cnn.com/2019/05/31/tech/tesla-advertising/index.html https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00019/030600027/ https://www.theverge.com/2020/1/15/21067715/bose-shutting-down-retail-stores-layoffs-north-america-europe-japan-australia https://www.macrotrends.net/stocks/charts/TSLA/tesla/revenue https://www.cnbc.com/2020/01/03/tesla-tsla-4q-2019-production-and-delivery-numbers.html